2025/08/13
近年、私たちの生活にECサイトが深く浸透し、その数は増加の一途をたどっています。
これにより製品を配送する機会が格段に増え、物流業界全体の負担も大きくなっている状況です。
一方で、配送センターの人員やドライバーは少子高齢化の影響で慢性的な人手不足に陥っています。
こうした環境の中、物流業界では業界全体の環境改善とさらなるホワイト化が強く求められるようになりました。
また、長い歴史の中で積み重ねられてきた常識や作業手順が、現代の社会情勢や技術とかい離している点も大きな課題となっています。
これらの背景を踏まえ、物流業界の改善は喫緊の課題となっているのです。
物流改善を効果的に進めるためには、適切な方向性と基本的な考え方を把握することが重要です。
物流改善は単に効率化やコスト削減を目指すだけでなく、企業のビジネスモデルに合わせた最適なアプローチが求められます。
ここでは、物流改善の基本的な考え方として、「最大化と適正化のバランス」と「物流コストの適切な把握と削減」について解説します。
物流における業務改善とは、生産性や効果を「最大化」と「適正化」という2つの方向性の妥協点を見つける作業です。
最大化とは、物流が必要な効果を十分に発揮することを意味し、適正化は物流に用いられるリソースが適正な量に抑えられていることを指します。
toCビジネスでは「最大化」が重視されます。今後の成長が見込まれる事業であり、利便性や正確性を高める方向の改善が主体となります。
一方、toBビジネスでは「適正化」が重視され、穏やかな成長予測の中で、投入リソースを減少させつつ効果を維持する効率性重視の改善が目指されるのです。
物流コストとは、物品の移動や取引、処理にかかるすべての費用を指します。
これは「支払物流コスト」と「社内物流コスト」の大きく2つに分類できます。
支払物流コストは外部委託で行われている物流業務に関するコストで、比較的認識しやすいものです。
一方、社内物流コストは社内で発生する物流コストであり、経理上の項目に埋もれがちで見落としやすい特徴があります。
効果的な物流コスト削減には、まずこれらのコストを正確に把握することが大切です。
コスト削減のための具体的なアプローチ方法は以下のとおりです。
【物流コスト削減のための具体的アプローチ】
コスト区分 |
削減アプローチ |
支払物流コスト |
|
社内物流コスト |
|
保管コスト |
|
輸送コスト |
|
人件費関連 |
|
物流全体 |
|
物流業務の改善を効果的に進めるためには、重点的に取り組むべきポイントを理解することが大切です。
物流改善の成功には、以下の5つの要素が特に重要となります。
これらのポイントに焦点を当てて改善を進めることで、物流業務全体の最適化を実現できます。
以降では、各ポイントについて解説します。
物流改善において、業務上で発生しがちな3M(ムリ・ムダ・ムラ)を減らすことが重要です。
「ムリ」とは少ない人員で過剰な作業量をこなしている状態、「ムダ」はマンパワーが余っている状態、「ムラ」は成果や効果が安定しない状態を指します。
これらの3Mは、必要な場所に必要な人員を配置できていないことが主な原因で生じます。
3Mをなくすためには、マニュアルの作成による人員の均質化、作業工程ごとの属人化の抑制、機械導入による自動化などの対策が有効となります。
3Mを改善するための課題は多岐にわたりますが、改善に成功すれば物流全体の流れが円滑になり、大きな効果が期待できるでしょう。
物流業界は人力に依存している業務が多く、人為的なミスが発生しやすい環境にあります。
特に物流業務の中で属人化している部分を洗い出し、対策を講じることが効果的です。
人為的なミスは、業務が特定の人に依存している場合に発生しやすくなります。
属人化は他のスタッフによる確認を妨げる原因となるため、ダブルチェックの実施や倉庫内環境の整理整頓が重要です。
バーコードやQRコード、OCR対応機器の導入によって目視での確認作業を減らし、人為的なミスを大幅に削減することが可能になります。
また、ヒューマンエラーの原因となる疲労やストレスを軽減するための労働環境の改善も効果的な対策となるでしょう。
作業効率は、物流業務のどの工程においても向上する余地があると考えられるポイントです。
効率アップを目指すには、現場における実際の業務効率を測定する指標が必要となります。
マテリアルハンドリング(MH/マテハン)は、物流や製造現場における資材や製品の移動、運搬、保管、仕分け、梱包などの作業全般を指す言葉です。
有効なマテハンを利用することで調達、生産、販売、回収を含めた作業員一人当たりの生産性全般を数値改善します。
たとえば、作業場所の通路幅を調整して動線を明確にし、無駄な動きを削減することで移動の効率化が図れるなど、具体的な改善につなげられます。
作業工程を適切に分析・管理することも業務改善には欠かせない要素です。
社内でミスが発生した場合に、それが人為的なものなのかシステムの欠陥なのかを的確に判断できれば、再発防止と作業効率の向上が期待できます。
物流業務の全工程に管理の視点が届き、作業の課題や問題点が記録され次第、即座に分析する体制を構築することが業務改善に大きく貢献します。
このような管理を実現するには、作業記録の細部まで把握する必要があります。
ミスや問題の対応を手書きの報告書に頼るのではなく、デジタル化して即座に共有できる体制を整えると効果的です。
情報処理のスピードを上げることで、問題の早期発見と改善が可能となります。
業務データを把握し、現場の采配や作業予定にフィードバックすることで作業効率を向上させることができます。
システムから得られるデータをもとに、日々の入出荷作業に必要な作業時間と作業人員数を明確にし、基準として活用する方法が有効です。
さらに、作業の進捗状況を監視して期限に間に合わせるために人員を調整する体制を整えることで、残業時間の短縮と予定内での作業完了が実現できます。
大掛かりなシステム導入がなくても、既存のシステムからデータを抽出して業務改善に役立てることが可能です。
データを活用した意思決定により、作業の「見える化」が進み、効率的な人員配置や業務計画の策定につながります。
結果として、コスト削減と生産性向上の両立が図れるでしょう。
物流改善の理論を理解したところで、実際の企業がどのように改善を実現し、どのような効果を得たのかを見ていきましょう。
以下に、異なる角度から物流改善に取り組んだ事例です。
これらの成功事例から、自社に適用できる具体的なアイデアやアプローチ方法を見つけ出すことができるでしょう。
▶課題:ピッキング作業における人的ミスが多発し、物流効率を著しく低下させていた。
▶解決策:バーコード管理システムを導入し、目視に頼らない正確な商品確認体制を構築した。
ある企業では、ピッキングに関する人的なミスが多発し、物流工程全体の大きな障害となっていました。
品番の文字が小さすぎたり桁数が多すぎる場合、または見た目が似ている商品が多い場合には、ミスの発生確率が高まる傾向にありました。
この問題を解決するため、同社は物流倉庫の業務にバーコード管理システムを導入しました。
この結果、目視による不安定な作業がなくなり、人為的なミスが劇的に減少。正確性が向上しただけでなく、作業効率も大幅に改善されました。
さらに、管理スタッフが作業の進行状況をリアルタイムで把握できるようになり、適切な人員配置が可能になりました。
これにより不要な人件費が削減され、3M(ムリ・ムダ・ムラ)の排除にも成功したのです。
▶課題:toC業務の拡大に伴い商品のサイズにばらつきが生じ、従来の倉庫スペースでは収納効率が悪化していた。
▶解決策:倉庫内に2階やメザニン(中2階)を設置し、空間を三次元的に活用する方法を採用した。
ある企業は、物流倉庫の容量不足という課題に直面していました。
特にtoC業務の拡大に伴い、取り扱う商品のサイズにばらつきが生じ、従来の倉庫スペースで効率的に収納することが難しくなっていました。
この問題を解決するため、同社は倉庫内の空間を三次元的に活用する方法を採用。
具体的には、パレットラックやネスティングラックを設置し、これまでスペースを圧迫していた小型商品を効率的に収納できるようにしました。
この改善により、大型の倉庫を新設するよりも少ない予算で保管効率を向上させることに成功。
限られたスペースを最大限に活用する工夫が、コスト削減と業務効率化の両立をもたらした好例といえるでしょう。
▶課題:作業工程が複雑で担当範囲が広すぎたため、スタッフの負担が大きく現場の整理整頓も不十分だった。
▶解決策:作業工程を細分化してシンプルにし、倉庫内のレイアウトと動線を根本から見直した。
ある企業では、物流倉庫の作業工程においてスタッフの担当範囲が広すぎるために負担が大きく、現場の整理整頓も不十分な状態でした。
この状況がさらなる作業効率の低下を招くという悪循環に陥っていました。
課題解決のため、同社はまず作業工程を細かく区切り、各スタッフの担当内容をシンプルに再設定しました。
同時に、動線やレイアウトを根本から見直し、倉庫内の区画表示をより細かく変更。
さらに、出荷頻度に応じて保管場所を柔軟に変更できる仕組みも導入しました。
これらの改善により、作業の動線が最適化され、スタッフの負担が軽減。
作業効率が大幅に向上し、全体的な業務の流れがスムーズになったことで、納期厳守率の向上にもつながったのです。
物流改善の基本的な考え方と具体的な事例を踏まえ、ここでは実際に物流業務改善を成功させるための実践的なアプローチ方法を紹介します。
物流業務の課題を根本的に解決し、持続的な効果を得るためには、以下の要素が重要となります。
これらのアプローチを適切に組み合わせることで、自社の物流課題に最適な改善策を実現することができるでしょう。
物流システムは、輸送や保管、荷役、包装などの物流の一連の工程を管理するもので、近年の物流業界では非常に効果の高い改善手法と考えられています。
主な種類としては、倉庫管理システム(WMS)や在庫管理システムがあります。
倉庫管理システムは、倉庫内の業務プロセスを管理し、作業をより効率化するシステムです。
同時に、社内の商品在庫を適切に管理し、入出庫業務や配送、受発注業務なども円滑にコントロールできる在庫管理システムと組み合わせることで、物流全体の流れを可視化できます。
これらのシステム導入により、管理作業をより簡単にかつ効率的に行えるようになり、人為的ミスの削減やコスト削減にもつながるでしょう。
アウトソーシングは、人手不足、保管スペースの不足、コスト面の課題などを一気に解決する有効な施策です。
物流業務をアウトソーシングすることで、企業は本来のコア業務に集中できるメリットがあります。
ただし、アウトソーシングにはある程度の経費がかかるため、導入コストやランニングコストについては慎重な検証が必要です。
また、業務委託により生じる余剰人員の有効活用や、主要業務への集中といったメリットを考慮した上で、アウトソーシングの範囲を決定することが大切です。
特に入荷・検品作業までを外部に委託することで、人的・時間的リソースを大幅に確保でき、シーズンごとの物流コスト変動にも対応しやすくなります。
物流業務改善は、一度実施して終わりではありません。改善の影響が物流全体に表れるまでには時間がかかるため、継続的な検証が不可欠です。
また、一つの改善が新たな課題を生み出す可能性もあるため、注意深い観察が必要となります。
具体的には、荷物の配達業務を改善した場合、配達時間や配達のステータスの記録を分析することで改善効果を測定できます。
このような分析により、さらなる改善点を模索し、新たな課題の発生も早期に発見することが可能になります。
また、改善策実施後には実際の現場スタッフからの意見聴取も重要です。
現場からの生の声を聞くことで細かな改善点が見つかるだけでなく、スタッフの納得感を高め、改善への協力を得やすくなるでしょう。
株式会社ネオロジスティクスは、25年の実績と35社以上の物流事業支援経験を持つ物流アウトソーシング専門企業です。
弊社のサービスは単なる「代行」ではなく、顧客企業の物流部門として機能し、継続的な改善提案を行う点が強みとなっています。
対応業務は、ピース(バラ)単位でのピッキングから、ラベル貼付、ギフトラッピング、店舗仕分けまで多岐にわたり、加工食品や美容化粧品、雑貨類など幅広い商材を取り扱っています。
自社開発のWMSを導入し、顧客ごとにカスタマイズが可能です。
最大のメリットは物流コストの「固定費」から「変動費」への転換で、繁閑差に関わらず適正なコストを実現できるため、導入企業は本業に専念でき、売上向上や品質改善を図ることが可能です。
25年の実績と35社の信頼!ネオロジスティクスの物流アウトソーシングの詳細はこちら
本記事では物流改善の基本的な考え方から具体的な実践方法まで解説しました。
効果的な物流改善のためには、最大化と適正化のバランスを見極め、物流コストを適切に把握することが重要です。
また、3Mの排除、人的ミスの予防、作業効率の向上、作業工程の管理、データの活用という5つのポイントを押さえることで、改善効果を最大化できます。
バーコードシステム導入による人的ミス削減、倉庫の三次元的活用による保管効率向上、作業工程の再構築による動線最適化などの成功事例は、具体的な改善策のヒントとなるでしょう。
物流システム導入やアウトソーシングも効果的な選択肢として検討し、継続的な改善を目指してください。