通関手続きとは?時間がかかる原因、手続きの流れ、必要書類まで解説

通関に時間がかかる理由とは

2022/10/17

通関手続きとは、貿易を行う際に、輸出入される貨物に対して国の許可を得るために、税関に申請・申告し、必要な検査や関税・消費税の納付を行う一連の手続きのことです。

通関手続きは、海外との取引を行う上では避けて通れません。
ただ、手続きが煩雑だったり予測不能な時間がかかったりすると、「商品提供のリードタイム長期化」や「顧客満足度の低下」といった経営課題につながってしまいます。

税関の審査・検査、書類の不備、国際情勢など、通関の遅延を引き起こす要因は多岐にわたります。

そこで、この記事では、「通関手続きとは何か」といった基本から、手続きに時間がかかる原因、標準的な手続きの流れ、そして必要な書類までをわかりやすく解説いたします。

通関手続きとは

通関手続きとは、貿易を行う際に、輸出入される貨物に対して国の許可を得るために、税関に申請・申告し、必要な検査や関税・消費税の納付を行う一連の手続きのことです。

通関手続きには、単に貨物を国境を越えさせるためだけでなく、以下の重要な目的があります。


関税・消費税の徴収

輸入品に対する関税や消費税を正確に徴収し、国の財源を確保します。


貿易の統計作成

どのような品目がどれくらいの量で輸出入されているかを記録し、貿易政策の基礎情報とします。


社会の安全と安心の確保

輸出入が禁止されている物品(偽ブランド品、麻薬、銃器など)や、国の法令で規制されている物品(食品、植物、動物など)が不正に流通するのを防ぐことです。

 

通関手続きの流れ

通関手続きは、「申告」→「審査」→「検査」→「(納税)」→「許可」という流れで進行します。

輸入と輸出で一部フローが異なりますが、ここでは主にEC事業者が直面しやすい輸入通関の流れに焦点を当てて解説します。


保税地域への搬入

外国から到着した貨物は、まず税関の管理下に置かれる「保税地域」に搬入されます。


輸入申告

貨物の所有者(または委任を受けた通関業者)が、税関に対し「輸入(納税)申告書」と必要な書類を提出します。


税関の審査・検査

申告内容と提出書類に基づき、税関が貨物の品目分類(HSコード)、価格、原産地などを審査します。
この際、書類審査(区分2)や貨物検査(区分3)が必要と判断される場合があります。


関税などの納付

審査が完了し、関税・消費税が確定したら、これらの税金を国に納めます。


輸入許可と貨物の搬出

納税が確認され、すべての要件を満たすと税関から輸入が許可され、保税地域から貨物を引き取ることができます。

 

通関手続きに必要な書類

通関手続きには多くの書類が必要となりますが、最低限準備すべき主要な書類は以下の通りです。


輸入申告書

税関長に提出する、輸入する貨物の品名、数量、価格、納税額などの必要事項を記載した書類です。

通関業者がNACCS(輸出入・港湾情報処理システム)を利用して電子申告する場合は、端末操作で代替されることもあります。


仕入書(インボイス/Invoice)

輸出者(外国のサプライヤー)が作成する、貨物の品名、数量、価格、貿易条件、荷送人および荷受人の情報などを記載した書類です。
通関書類の中で最も重要であり、価格や品目の確認に用いられます。

インボイスに重要な情報が不足していると、通関手続きの遅延につながります。


包装明細書(パッキングリスト/Packing List)

貨物の個数、梱包ごとの重量・容積などを記載した書類です。
インボイスを補完する役割を持ち、価格や決済に関する情報は通常、記載されません。


船荷証券(B/L)または運送状(AWB/SWB)

船会社が発行するB/L(Bill of Lading)、または海上運送状(Sea Way Bill: SWB)、航空貨物運送状(Air Waybill: AWB)などのことです。

これらは、運送人が貨物を受託し運送を引き受けたことを証明するもので、荷受人が貨物の引渡しを受けるために必要な書類です。


運賃明細書・保険料明細書

運賃明細書とは、貨物の国際輸送にかかった運賃の明細を示す書類です。
運送会社から発行されるアライバルノーティス(貨物到着通知書)が、運賃明細書を兼ねている場合もあります。

保険料明細書とは、海上保険などに加入している場合、支払った保険料の明細を証明する書類です。


他法令の許可・承認証

上記に加えて、輸入する貨物が食品衛生法、植物検疫法、電気用品安全法など、関税法以外の法令(他法令)による規制の対象となっている場合は、各法令に基づく許可・承認証も必要になります。

これらの書類に不備や記載ミスがあると、通関の遅延に直結します。

 

通関手続きにかかる時間の目安

通関手続きにかかる時間は、貨物の種類や税関の状況、申告区分によって大きく変動するため、一概にはいえません。
ただ、目安となる時間は、次の通りです。


簡易通関の場合

手続きが簡素化されているため、その日のうちに完了する場合が多いです。


一般通関の場合

関税評価や許認可手続きが必要なため、数日~数週間かかることがあります。


平均的な目安(申告から許可まで)

海上貨物で約2時間半、航空貨物で約20分程度ですが、これはあくまで「申告から許可までの時間」であり、書類準備や検査の時間は含まれていません。

特にECサイト向けの貨物は、少量多品目であることや、新しい商品が多いことから、税関の審査・検査が入りやすく、想定より時間がかかるケースも少なくありません。

 

通関手続きに時間がかかる主な原因

通関の手続きは、特に問題がなければ5時間程度で終了します。

ただ、国際書留郵便の場合は土・日・祝日は通関作業が止まることがあるため、長い時で1週間程度の時間を要するケースもあります。

しかし時には1週間以上経っても通関手続きが完了しないこともありますよね。これはどうしてなのでしょうか。


繁忙期や荷物本体に原因がある

通関にいつもより時間がかかる場合、以下のような理由が考えられます。

  • 繁忙期
  • 課税対象の物品
  • 偽ブランド品の疑いがある
  • インボイス(仕入書)に不備がある
  • アライバルノーティス(貨物到着通知)の遅延

繁忙期

年末年始やゴールデンウィークといった長期休暇期間は、税関の処理体制が限定されるため、通常よりも時間がかかる傾向があります。

特に12~1月は輸出入が集中する繁忙期とされており、物流スケジュールには余裕を持つ必要があります。


課税対象の物品

貨物が課税対象の物品である場合、その評価や税率の決定のために審査が入ることがあり、手続きに時間を要します。

また、輸入税や関税の支払いが速やかに行われない場合も、税関が処理を停止し、遅延が発生する可能性があります。


偽ブランド品の疑いがある

税関が、貨物の中に偽ブランド品や輸入禁止品目が含まれている疑いを持った場合、審査が厳格になり、手続きに時間がかかります。

特に、新規で輸入する商品の場合、詳細な商品説明がないと偽ブランドと誤認されるリスクもあるため、書類には正確かつ詳細な情報を記載しなければなりません。


インボイス(仕入書)に不備がある

通関士がインボイスをチェックする際、必須記載事項(品名、数量、価格、貿易条件など)の漏れや誤りがあると、税関から訂正を求められます。

インボイスの発行元は海外の輸出者であるため、訂正依頼には時差や言語の壁が伴い、数日~数週間の大幅な遅延につながる恐れがあります。

また、申告価格が不当に低いと税関が疑う場合も、追加の審査で時間が長引きます。


アライバルノーティス(貨物到着通知)の遅延

アライバルノーティスとは、輸入貨物が到着することや貨物取扱費用について船会社・航空貨物会社が知らせる書類です。

この通知書がないと、輸入申告を行うことができません。
船の遅延など、輸送側の問題でこの通知書の発行が遅れた場合、通関手続きの開始そのものが遅れてしまいます。

 

スムーズな通関を実現するポイント

通関の遅延は、ECサイトの販売計画や資金繰りにも影響を及ぼします。

経営層として、安定的な物流体制を構築するためのポイントは以下の2点です。


事前チェック体制の強化

通関業者に書類を渡す前に、インボイスの必須記載事項やHSコードの正確性を自社でも二重チェックすることで、致命的な書類ミスを防ぎます。


物流のプロへの委託(アウトソーシング)

経験豊富な通関業者やフォワーダーに依頼することで、煩雑な手続きや法規制の確認、予期せぬトラブルへの対応を迅速に行うことができます。
アウトソーシングすることで、社内の人的リソースをもっと重要な業務に当てることができるようになります。

まとめ

通関に時間がかかるのは主に繁忙期や課税対象の物品、偽ブランド品の疑いや仕入書に問題があるケースなどです。

通関で荷物の流通が止まるとビジネスにも影響が出てしまいます。

もしお困りの場合は流通の専門家にご相談いただくと良いでしょう。

株式会社ネオロジスティクスでも通関手続きを含む物流のアウトソーシングを請け負っています。

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