
最低賃金上昇に伴う自社雇用の限界と物流業務を「外注化(変動費化)」すべき理由
2026/09/24
物流システムは、業務の効率化を実現するためのシステムです。
しかし、ひと口に物流システムといっても種類は多岐にわたり、自社の課題に合わせてどれを導入すればいいのか、また導入することでどのようなメリット・デメリットがあるのか、判断に迷う方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、物流システムの基本的な考え方から代表的な種類、導入するメリット・デメリット、選び方、最新トレンドまでを網羅的に解説します。
物流システムとは、輸送・保管・荷役・包装・流通加工という物流の主要な機能を、ITの力でデータとして一元管理し、効率化・最適化する仕組みの総称です。商品が生産者から消費者の手元に届くまでの一連の流れには、受注、在庫管理、庫内作業、配送計画、輸送実行など多くの工程が存在し、これらを人手だけで管理するのは限界があります。
物流システムを導入することで、各工程で発生する情報をリアルタイムに可視化し、正確でスピーディーな判断ができるようになります。一口に「物流システム」といっても対象範囲はさまざまで、受注管理に特化したものから、倉庫内の自動化設備を制御するものまで、目的や機能によって複数の種類に分かれます。次章では、それぞれの種類を具体的に見ていきます。
物流のシステム化が急がれる背景には、いくつかの構造的な課題があります。ドライバーの時間外労働規制に伴う輸送能力の不足、EC市場の拡大による荷量の増加、そして現場の人手不足です。これらの課題は今後さらに深刻化することが見込まれており、従来の紙やExcelによるアナログな管理では対応が難しくなりつつあります。
物流システムを導入し、業務プロセスをデータで可視化・標準化することは、人手に頼らない持続可能な物流体制を築くための土台になります。物流業界がどのような課題に直面しているかについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
物流システムとひと言でいっても、対象とする業務範囲によって役割は大きく異なります。ここでは代表的な8つのシステムを、業務の流れに沿って紹介します。
OMS(Order Management System)は、ECモールや自社サイト、電話注文など複数の販売チャネルから入る注文情報を一元管理するシステムです。受注確認や在庫の引き当て、出荷指示、入金確認といった一連の処理を自動化し、複数チャネルを運営する企業ほど効果を発揮します。人の手による確認作業を減らすことで、受注ミスや対応漏れの防止にもつながります。
IMS(Inventory Management System)は、在庫数や保管場所などの在庫情報を管理するためのシステムです。人の手で大量の商品を管理すると数え間違いによるミスのリスクが高まりますが、システムで一括管理すれば正確な在庫数をリアルタイムに把握でき、欠品や過剰在庫の防止、従業員の負担軽減につながります。
WMS(Warehouse Management System)は、倉庫内の入出庫や保管、在庫といった一連の業務を統合的に管理するシステムです。主な機能には、入出庫管理、在庫管理、ロケーション管理、棚卸管理などがあり、庫内のどこに何がどれだけあるかを正確に把握できるようになります。在庫管理システムが在庫情報に特化しているのに対し、WMSは庫内作業全体を管理対象とする、より広い範囲をカバーするシステムという位置づけです。
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WES(Warehouse Execution System)は、WMSとWCS(後述)の間に立ち、庫内の作業やリソースをリアルタイムに調整・最適化するシステムです。WMSからの出荷指示を受けて、どの作業をどの順序で、どの設備・作業者に割り当てるかを判断し、コンベアやロボットといった自動化機器への指示や作業者へのタスク配分を最適化します。複数の自動化設備が混在する倉庫ほど、WESの重要性が高まります。
WCS(Warehouse Control System)は、倉庫内の自動化されたマテリアルハンドリング機器を直接制御するシステムです。コンベアやソーター、自動倉庫、ロボットアームといった設備に対して具体的な動作命令を出す役割を担い、WMSやWESからの指示を機器が実行できる形に変換します。WMSを「倉庫の頭脳」、WCSを「倉庫の手足」に例えると分かりやすく、WESはその両者をつなぐ調整役といえます。
TMS(Transport Management System)は、物流センターから商品が出荷された後、配送先に届くまでの輸送業務全体を管理するシステムです。主な機能には、配車計画、運賃計算、動態管理(車両の位置や状況のリアルタイム把握)などがあり、配送ルートの最適化やドライバーとの情報共有、帳票・日報作成の効率化に役立ちます。これらは現在もアナログな方法で行っている企業が多い領域ですが、システム化によってトラブルのリスクを減らすことができます。
バース管理システムは、工場や倉庫でトラックが荷物の積み降ろしを行う「バース」の利用状況を事前に調整・管理するシステムです。トラックの到着時間を事前予約することで特定時間帯への集中を防ぎ、荷待ち時間の削減や庫内作業の平準化につながります。近年はドライバーの労働時間規制への対応策としても注目されており、WMSと連携して積み込み・積み降ろしの荷量に応じたバース割り付けを行う仕組みも増えています。
生産管理システムは、商品の原価や工程・納期・在庫などを管理するシステムで、企業全体の基幹業務を統合的に管理するERP(Enterprise Resource Planning)の一部として提供されることもあります。生産・調達・在庫・販売といった情報を横断的に管理することで、生産性の向上や納期スケジュールの短縮が期待できます。
物流業務にはさまざまなフローが存在し、全てを人の手で管理するのは困難です。物流システムを導入することで、受注から出荷、配送までの作業工程をリアルタイムに一括管理できるようになります。
物流システムでは、出荷件数や在庫の推移、作業時間といったさまざまなデータを蓄積・確認できます。これらのデータを分析して問題点を改善することで、生産性や品質の向上につながります。
物流にかかるコストは、輸送費、保管費、人件費、荷役費など多岐にわたり、どこにどれだけのコストがかかっているかを把握しにくいという課題があります。物流システムを導入すれば、工程ごとのコスト構造がデータとして可視化されるため、無駄なコストの発見や、根拠に基づいたコスト削減施策の立案がしやすくなります。
在庫の数え間違いや伝票の記入漏れ、出荷先の誤りといった人為的ミスは、人手による作業につきものです。物流システムを導入し、バーコードやハンディ端末による読み取り、システムによる自動チェックを組み込むことで、こうしたヒューマンエラーの発生を大幅に減らすことができます。
物流システムの導入には多くのメリットがある一方で、事前に理解しておくべき注意点もあります。
物流システムの導入には、初期費用に加えてライセンス料や保守費用などの維持費が継続的に発生します。特にオンプレミス型のシステムや、自社の業務フローに合わせて開発するシステム開発型は、まとまった初期投資が必要になる傾向があります。自社の規模や予算に見合った提供形態を選ぶことが重要です。
新しいシステムを導入すると、これまで紙やExcelで行っていた業務のやり方が大きく変わります。現場担当者から管理職まで、操作方法や新しい業務フローに慣れるための教育・研修が欠かせません。導入直後は一時的に生産性が落ちたり、慣れないことによる作業ミスが増えたりするリスクがある点も踏まえ、導入スケジュールや教育体制をあらかじめ計画しておく必要があります。
数ある物流システムの中から自社に合うものを選ぶには、以下のような観点でチェックすることが重要です。
「在庫精度を上げたいのか」「配送効率を上げたいのか」「複数拠点を一元管理したいのか」など、自社が解決したい課題を明確にした上で、その目的に合った種類のシステムを選ぶことが大前提になります。
企業規模によって必要な機能や予算感は大きく異なります。また、業界によっては独自の商慣習や表示義務、帳票フォーマットが存在するため、自社の業界特性に対応できる柔軟性があるかも確認しておきましょう。
すでにERPや受注管理システムを利用している場合、新たに導入する物流システムとの連携がスムーズに行えるかは非常に重要なポイントです。連携がうまくいかないと、結局データを手入力し直す二度手間が発生し、システム化のメリットが半減してしまいます。API連携の可否や実績を事前に確認しましょう。
物流システムの提供形態には、大きく分けてクラウド型・オンプレミス型・パッケージ型があります。クラウド型は初期費用を抑えて短期間で導入でき、法改正等のアップデートにも柔軟に対応しやすいのが特長です。オンプレミス型は自社サーバーで運用するため、自由度の高いカスタマイズがしやすい反面、初期投資が大きくなります。パッケージ型は既存の機能をそのまま利用する形で、コストと自由度のバランスを取りたい場合に選ばれます。
システムは導入して終わりではなく、運用開始後のトラブル対応やアップデートが継続的に発生します。ベンダーのサポート体制が整っているか、また物流データという重要な情報を扱う以上、セキュリティ基準が自社の求める水準を満たしているかも、選定時にあわせて確認しておきたいポイントです。
近年は、AIを活用した需要予測システムの導入が加速しています。過去の販売実績だけでなく、季節変動や天候、SNS上のトレンドといった外部要因まで組み合わせて需要を予測することで、欠品や過剰在庫のリスクを抑え、適正在庫を維持しやすくなります。物流現場でのAI活用は在庫管理にとどまらず、配送ルートの最適化や検品作業など幅広い領域に広がっており、今後さらに実装が進むと見られています。
倉庫内の人手不足を背景に、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)といった自動化設備の導入が進んでいます。これらのロボットは単体で稼働するのではなく、WMSやWES・WCSといった物流システムと連携することで真価を発揮します。システムからの指示に基づいてロボットが自動的に商品をピッキング場所まで搬送するなど、庫内作業全体の省人化・効率化を実現する取り組みが広がっています。
ここまで見てきたように、物流システムには多くの種類があり、選び方や導入後の運用にも専門的な知識が求められます。「自社だけで最適なシステムを選定・運用する自信がない」「まずは業務効率化を進めたいが、システム投資までは踏み切れない」という場合には、物流業務そのものを専門会社に委託する物流アウトソーシングも有効な選択肢です。
すでに最適化されたシステムと運用ノウハウを持つパートナーに任せることで、自社でシステムを一から導入・運用する負担をかけずに、物流の効率化を実現できます。
物流システムには、OMS(受注管理システム)、IMS(在庫管理システム)、WMS(倉庫管理システム)、WES(倉庫運用最適化システム)、WCS(倉庫制御システム)、TMS(輸配送管理システム)、バース管理システム、生産管理システム(ERP)など、対象範囲の異なるさまざまな種類があります。
物流システムを導入することで、作業工程の一括管理やデータ分析、コストの可視化、ヒューマンエラーの防止といったメリットが得られる一方、導入コストや現場教育といった負担も発生するため、自社の目的や規模に合ったシステムを見極めることが重要です。
弊社では物流システムの構築・選定・導入・運用まで、また物流業務そのもののアウトソーシングまで幅広く支援しておりますので、気軽にご相談ください。